001 CNRIA

Interview

デジタル技術の活用で効率的に安全管理
(株)プロテリアル 安来工場における「カナリア」の活用事例

Efficient Safety Management Through Digital Technology
Case Study of ‘CNRIA’ Utilization at Proterial Yasugi Plant

Client:
安来工場 生産技術部
部長 池尻 太一
安来工場 生産技術部 安全衛生グループ
グループ長 岡本 拓也
株式会社プロテリアル 様
事業内容 特殊鋼、ロール、自動車鋳物、磁性材料、
パワーエレクトロニクス、電線、自動車部品の製造と販売
従業員数 単体5,759名、連結21,456名(2024年3月31日時点)

鉄道車両や自動車、航空機、エレクトロニクスなど、幅広い分野で高機能材料を製造するプロテリアルグループ。同グループでは「安全と健康はすべてに優先する」という行動原則のもと、2019年からウェアラブルデバイスを活用した熱中症対策に取り組んできました。さまざまな製品を比較検討し、緻密な調査と評価を繰り返した結果、2024年から安来工場の製造職場で働く方全員に対し、カナリアの配布を開始しました。トライアルの過程や導入後の効果について、生産技術部の池尻様、岡本様にお話を伺いました。

背 景

製造職場の暑熱環境を危惧し、
経営視点で安全対策を強化

熱中症対策にウェアラブルデバイスを本格導入することになった
きっかけを教えてください。

池尻 様

弊社では、鉄を溶かす溶解や、温められた鉄を叩いて成形する熱間加工等、暑熱環境での作業が主となります。溶解温度は1500℃以上。熱源近くの作業ですと、輻射熱や熱の滞留の影響で、暑さ指数(WBGT)はかなり危険なレベルまで上昇する場合もあります。このような環境下ですので、過去には熱中症の症状が見られ、医療機関での治療を受けた事例もありました。いままでも、暑熱負荷を軽減するためにクーラーや建屋空調などを積極的に導入したり、熱源自体を覆って熱の放散を抑制したり、環境改善に取り組んできました。しかし、溶けた鉄が存在する高温環境そのものを完全に変えることは難しく、作業者の安全を守るためには、熱中症の兆候を早期に検出し、迅速に対応する必要がありました。
また、2019年からはプロテリアルグループ全体として、安全意識を経営の視点から強化する方針を打ち出したため、従来の取り組みに加えて、IT・デジタル技術を活用した、効率的な安全管理を進めることになりました。

導入の決め手

熱中症予防の要である深部体温を
精密にモニタリング

カナリアの導入を決めた理由を教えてください。

池尻 様

バイタルデータを活用したデバイスは2019年頃から市場に登場し始めたと認識しています。当時、7〜8種類のデバイスを検討・評価しましたが、検討したものの多くは通信機能を備え、作業者の状態に異変があった際、管理者にメールで通知される仕様でした。しかし、この方式では導入規模が拡大するにつれ、管理者がタイムリーに作業者の状況を把握し、適切に対応することが難しくなります。安来工場では約1,500名の方が製造職場で働いているので、管理者が一元的に対応する方式よりも、作業者自身や仲間同士で状況を確認し合い、職場で対応できるデバイスのほうが実用的だと考えました。
また、測定方式としても心拍数や脈拍などをモニタリングするものが多かったのですが、それらの指標では熱中症リスクの上昇と、緊張や運動負荷による変動を区別するのが難しく、熱中症対策としての信頼性に課題がありました。

岡本 様

検討したデバイスの中には、アラームが頻繁に鳴るものもあり、その結果、本当に熱中症リスクがあるのかを判断するのが難しくなる場合があります。さらに、頻繁なアラームによって作業者が慣れてしまい、警告への注意が薄れ、十分に活用されない可能性がありました。

池尻 様

その点、カナリアは熱中症発症の根本原因となる深部体温の変化を捉えているので、熱中症リスクが高いと判断された場合にのみアラームが発報される構造です。推定原理は医療機器と同じであり論理的な裏付けがあることから、トライアルをスタートしました。また、これまで検討したデバイスのほとんどは充電式でしたが、充電忘れやバッテリー切れにより、いざという時に使用できないリスクがありました。一方で、カナリアはシーズンを通して連続動作するため、運用面でも大きなメリットがありました。

導入後の効果

分析結果から効果を実感、
思いがけない場所への対策も

カナリアを導入してどのような効果がありましたか?

池尻 様

2023年に実施したトライアルで、使用後のデバイス分析してもらったところ、上昇していた深部体温がアラームをきっかけに休憩を取得したことで低下し、熱中症を回避できたことが結果から示されました。もちろん、休憩を取らなかった場合に熱中症になっていたのかどうかを確認する術はありません。ただ、猛暑日が増えている中でも熱中症の発生件数が減少傾向にあることは事実ですので、カナリアが熱中症対策として効果を発揮していると認識しています。こうした検証を経て、2024年から安来工場の製造職場で働く方への全員配布に踏み切りました。

岡本 様

分析の結果、一部の冷間職場において、熱間職場以上の熱中症リスクが存在していることが明らかになりました。予想外の結果ではありましたが、熱中症リスクを高める要因が暑熱環境だけでなく、作業強度や個人の特性にも左右されることを踏まえると納得できます。こうした作業者の深部体温ベースでのリスク評価は、新たに熱中症対策を検討する際の重要な判断材料として活用しています。

今後の展望

肉体的負荷を減らす投資と
次年度へのデータ活用

今後について

池尻 様

2025年も引き続き、作業者全員にカナリアを配布し、熱中症対策を強化していきます。これまでの教育により、数年前と比べて熱中症や深部体温に対するリテラシーは確実に向上してきました。そのため、デバイスを配布することに加え、職場で正しく理解し、適切に活用できるよう、教育も継続して実施していきます。また、熱間職場で環境整備に限界がある場合や、生産ラインの都合でアラームが鳴ってもすぐに休憩を取れない職場では、機械化や自動化の導入も検討しながら、安全かつ効率的な職場づくりを進めていこうと考えています。

岡本 様

Biodata Bankには毎年職場の声をフィードバックして、デバイスのアップデートにつなげていただいています。今後の開発にも期待しつつ、一緒に熱中症対策に取り組んでいければと思います。

まとめ

熱中症対策のように、「どこまで、何をやるか」の判断が難しい分野では、システマティックに改革を進めることは容易ではありません。何を基準に休憩を取るのか、指標とするデータは信頼に足るものなのか。これらが明確に示されていない限り、職場任せの運用になってしまうのが実情ではないでしょうか。
プロテリアルでは、熱中症予防のメカニズムを正しく理解した上で、多くのデバイスの中から技術的・医学的根拠が認められるカナリアを選定し、使用データを具体的な運用につなげています。この緻密な取り組みの根底にあるのは、健康経営の理念。その理念を単なる理想論で終わらせるのではなく、目に見える成果へと結びつけている点に、会社としての真剣さが表れています。

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