鉄道本部 施設部 管理課
課長補佐 浅葉 喜一 様
鉄道本部 施設部 金沢文庫電力区
助役 中谷 孝和 様
鉄道本部 施設部 金沢文庫保線区
助役 宮田 健作 様
京浜急行電鉄株式会社 様
事業内容
交通事業、不動産事業、レジャー・サービス事業、
流通事業、その他の事業
従業員数
約3,000人
私たちが日頃利用している電鉄会社ですが、電車が目的地に人々を運ぶ裏では、日々線路のメンテナンスを行い、電力供給のための作業を担っている人々がいます。京急電鉄の施設部では、暑さを極める現場の環境を改善すべくカナリアを導入。その背景や効果について施設部の浅葉様、中谷様、宮田様にお話を伺いました。
熱中症対策に本格的に取り組むようになったきっかけを教えてください。
ここ数年非常に暑い。特に炎天下の線路は過酷な環境ですが、周囲に日陰はありません。ただ現場の人に『休憩を取りなさい』『冷たいものを摂りなさい』と言うだけでは不十分で、具体的な対策を講じる必要がありました。
保線部門では、線路や枕木のメンテナンスを行っています。日中の外気温が30℃でも、レールは照り返しの影響で体感温度が50℃近くに達します。作業は列車の運行の合間に行われるため、電車が接近すればすぐに退避し、通過後に少しずつ進める形となります。こうして1日に4〜5㎞を作業する中で、知らないうちに熱中症のような症状が出てしまうこともあります。さらに、レールや電線は鉄や銅でできているため、暑さで伸びてしまいます。そのため、気温が高いからといって作業を止めることはできません。
電力設備の保守を行う私の部門は、柱や竹梯子に登って作業し、電車が来ると退避する、という作業を繰り返しています。高所では太陽に近づく分、暑さが増し、体力を消耗します。さらに、登った先では日陰もなく、力作業を行うこともあります。工事等の作業は列車の運行のない夜間しかできないので、終電から始発の間に作業を行いますが、夜間でも気温は高く、肉体労働を伴うため、熱中症のリスクは依然として高いのです。
過酷な職場というイメージはありますが、新入社員の入社や定着を促すためには、働く環境を整えることが重要だと考えました。現場作業が中心の会社だからこそ、リスクを減らす取り組みが欠かせません。その一環として、熱中症対策にも力を入れています。
カナリアの導入を決めた理由を教えてください。
従来も熱中症対策として、熱中症キットの配布やかき氷マシンの設置などに取り組んできました。しかし、『まだ大丈夫だろう』と無理をしたり、体調が悪くても言い出しづらかったりすることがあり、年に何人かは熱中症を発症していました。そこで、本人の自覚とは別に『そろそろ危ない』というシグナルを発してくれる仕組みが必要だと考え、カナリアの試験運用に至りました。データの分析もしていただいたら、やはり本人の自覚とは異なるタイミングでアラームが鳴っていることが分かりました。カナリアは深部体温に応じて危険信号を出し、熱中症リスクの早期発見につながるということから、本格導入を決めました。
カナリアを導入してどのような効果がありましたか?
下の立場だとなかなか自分から休憩を言い出しづらいですが、カナリアが鳴れば責任者もリスクに気付けるため、適切に休息をとらせる判断がつきやすかったです。
10人ほどで作業している際に、1人のアラームが鳴ると、作業班全員で10〜15分の休憩を取るようになりました。ただし、事故対応や復旧作業の際は、状況に応じてアラーム後の対応を柔軟に変更しています。従業員の安全はもちろん、運行スケジュールやお客様を守ることも重要だからです。一度現場に出るとなかなか休憩所には戻れませんが、早めの対応を徹底した結果、昨年は熱中症の発症者が1人も出ませんでした。
また、カナリアは時計みたいに装着できるため、作業の邪魔にならない点が現場でも好評です。
データ分析の結果から、アラームの鳴った回数が、午前は10時、午後は14時が多いとわかりました。今後はこれをもとに10時と14時を休憩時間に充てる改革ができると考えています。どういった形で休憩をとり、どのように作業していくか、そういう計画もデータをもとに実施できると感じています。
まとめ
屋外作業は厳しいイメージがあるかもしれません。しかし、京急電鉄では安全を第一に、真剣に熱中症対策に取り組むことで、猛暑日が続いた2024年も熱中症発症数ゼロを達成しました。このような姿勢が風通しのいい職場、自由にコミュニケーションがとれる環境につながっているのかもしれません。